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大阪地方裁判所 昭和54年(タ)251号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

<証拠>を綜合すれば、原告主張の請求原因事実はすべてこれを認めることができ、右事実によると、原告が亡呉如松の非嫡出子として出生したものであつて、同人が原告の血統上の父であることは明らかである。

ところで、右事実によると、亡呉如松は中華民国籍を有した者であり、原告は、その母である美智子が日本国籍を有するのであるから、国籍法第二条第三号により日本国籍を取得した者と認められる。従つて、呉如松と原告との間に認知が有効に成立するためには、法例第一八条第一項により、父である呉如松については同人の本国法である中華民国民法の定める認知の要件を充足し、子である原告についてはその本国法である我が民法の定める認知の要件を充足することを必要とするところ、先ず呉如松については、その本国法である中華民国民法はその第一〇六五条第一項後段において「其徑生父撫育者視為認領(生父が養育したときはこれを認知したものと看做す)」と規定して、父が非嫡出子を自己の子として養育している事実のみに基いて当然に認知の効力が発生することを認めており、前記事実によると原告は呉如松の許で同人の子として養育されて来たというのであるから、これによつて同国民法の右条項による認知の要件が充足され、既に認知の効かが発生しているものといわなければならない。

ところが、原告については、中華民国民法における右のような規定が我が民法に存在しないので、呉如松が任意に認知の届出をしないで死亡してしまつた以上、民法第七八七条に基く本件訴訟で勝訴判決を得るか、家事審判法第二三条第二項によつて右判決に代る認知の審判を得るか、いずれかの手続を経ない限り認知の要件を充したことにはならないことになる。

中華民国民法においては、このように既に前記のいわゆる撫育認知の要件が充されている場合に、子が血統上の父に対し重ねて認知の訴を提起できることを定めた規定がないので、原告が我が民法第七八七条に従つて呉如松に対し認知の訴を提起することは中華民国民法に牴触するのではないかとの疑問がないではないけれども、同国民法は一般的に血統上の父に対して認知の訴を提起することを禁止するわけではなく、むしろ同法第一〇六七条においては相当広範囲にこれを許容しているのであつて、同法第一〇六五条第一項後段も父が非嫡出子を自己の子として養育している事実があれば、他に格別の手続を必要とせず、当然に認知の効力が発生するとしているに過ぎないのであるから、その法意に照らしても、子が我が民法第七八七条所定の認知の訴によつて完全に認知の要件を充足しようとすることは、同国民法に牴触するものではないというべきである(最高裁判所昭和四四年一〇月二一日判決・民集第二三巻第一八三四頁)。

(中川臣朗 大串修 河村潤治)

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